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朝焼け、水辺、美「Tiroru」

朝焼け、水辺、美「Tiroru」

2026.05.06

前書き

都会の夜空には月だけがあります。 充溢した地上の光は、濁りない星々の輝きを夜空から奪い去って単純化させます。

ビル、コンビニ、2階建て4戸のアパート、街灯。 これらを逃れることは多くの人にとって不可能です。

ただ人間を動物として捉えると、都市空間が抱える不可能性は異常だと言えます。 鉄筋コンクリートや塩化ビニルは、動物からすれば異物です。 このために都市人は異物に対する緊張感を常に持ち、それを弛緩させようと、自然を体験しようと文明の力を借りるのです。

自然を得るため、文明を扱う。 それは生物としての倒錯ですが、現代人の平生です。 しかして倒錯は時間を要してしまいます。なので時間に追われる現代都市人は、文明に囲まれた生活の中で自然を見つけるほかありません。

朝焼け空の霞んだ空色と白色の陽光、街を満たす用水路の川霧のような自然を。

今回は、文明内の自然を想起する「Tiroru」を紹介させていただきます!

https://youtu.be/HaeM3owYgug?si=8JRYgsoyOtJTO8J1

朝焼け、水辺、美「Tiroru」

「Tiroru」の楽曲を聴いていると、生活の中の柔らかな光と水面の揺らぎを想起します

それはゆったりとした音の流れの中で、電子音と、奏者の存在する音——それは弾き手が動作している意味(手足の動きによって奏でられる音の使用により、現実性という重みが楽曲に付け足され、楽曲が単なる芸術世界ではなく、経験的で肉体的な世界を表現する)での——が調和した素晴らしき光景です。

歌唱も立ち昇る海霧のようで美しいです。 輪郭の曖昧な声は、自然そのものの実体のなさと、なのにもかかわらず美しいと思えてしまう神秘性を表現しています。

とにもかくにも、美しい音楽です。

冷たい朝、海辺の住宅街。 穏やか波から立ち上る白い靄の湿り気。 頭上に注がれる柔らかな朝陽。 烏の軽やかな羽ばたき。

それらはアルフレッド・シスレーの絵の様に透明感と柔らかな光に照らされています。

おすすめ曲

点滴の庭

「Tiroru」の良さをダイレクトに感じられる楽曲です。

ぶつかり合う軽金属の冷たい音、柔らかなピアノの旋律、輪郭が曖昧になった重なる歌声。

楽曲はこれら一体を絵筆として、幻想的な海景を描き出します。 描き出された光景の美は、理想的でありながらも生活に満ちています。

香りがあり、温度があり、手触りのある美です。

それは掠れた朝陽であり、港町に満ちる白々とした霧であり、霧雨の微かな冷たさであり、砂浜に流れ着いた小瓶の滑らかな輝きであり、砂と鉄錆のざらつきであり、コンビニコーヒーの香りです。

誰もが思い描くことができながら、誰もが経験したことのない光景。 これを1つの体験として想起させ、その空想の像を感じ、浸ってしまえる。 そんな印象がこの楽曲には含まれています。

幻想的な自然の美の内側で現実を描いている楽曲をぜひ。

https://youtu.be/Cz9Hfa_c2J4?si=pBg9bBynREkINc51

seabed

アコースティックギターの柔らかな響き、ドラムとベースのゆったりとした力強いリズム、繊細で透明な歌声。

それらは布団から抜け出したくない冷たい朝を描き出します。

手足が縮こまってしまう朝。 けれども布団の主は生活のために起きなければならず、ゆっくりと布団を抜け出して、カーテンを開けて、花曇りの空を見上げる。

年期が入った木のデスクの上には、片付けても片付けても片付けきれない便箋。

心の内は、今日がまた始まってしまったと感じる物悲しさ。 ただ、感傷に浸っている時間を持たないその人は、朝の支度を忙しなく済ませ、自分の行くべき場所へと向かう。

歩み行く住宅街は灰色。 街路樹の青々とした葉と、遠くから聞こえる波打ち音が皮肉に感じる。

この曲は、そんなどこにでもいる人(場所は違っても、生活の忙しなさに追い詰められているのは同じでしょう)の生活を描き出しています。

そして、砕けた硝子か割れたカーブミラーに反射する朝陽が美しいように、その景色が生活の灰色一色だとしても、それはとても美しいのです。

https://youtu.be/N6xDqnfibMk?si=-62pkHpN8g8nV8CZ

道先案内

「Tiroru」の楽曲は美しいです。

聴いていると脳裏に風景が浮かんできます。 その風景は理想的過ぎるがゆえに空虚なものではありません。 現実の体験に基づいた身体性を持った光景です。

1曲1曲が小説のようで、豊かな印象を有しています。

映画や絵画が好きな人は好きになれると思います。

また音楽的にはアンビエントやエレクトロニカの要素も強いので、それらの音楽が好きな人は絶対に好きになれます。

ぜひ、聴いてみてください!

またSoundCloudにも、数多く楽曲を投稿されているのでぜひ聴いてみてください!

https://open.spotify.com/artist/4zx0avuoDwC6pibOTxiP58?si=kfre9do4RhuDIUD5kXISzA

https://soundcloud.com/heg8y6f1kqfd

余力があれば

「汽笛の海」というEPが、本当に綺麗なので通して聴いてみてください。

素晴らしく美しい景色を見れますから。

https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kr_-t0qvX0YkzUFUUvSGOrWeAMx_5j4uo&si=2hNIStAgN19HIxq5

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