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倦怠とともに漂う憂愁「小雨ちゃん」

倦怠とともに漂う憂愁「小雨ちゃん」

2026.05.31

前書き

生活は苦難の連続です。

それは社会人でも学生でも変わりません。

目の前にある「やらなければならないこと」に追われながら、未来を考え、さらにそのために必要なことを用意して「やらなければこと」を増幅させ、終わりが見えない事柄に時間を消費し続ける。

そんなものが生活です。

けれども、こんなことを続けていれば人は狂ってしまいます。 瞬間的にでも離脱する必要があるのです。 その術は何だってよいです。 テーマパークに遊びに行くことでも、ライブハウスに通うことでも、アルコールを摂取することでも、煙草を吸うことでも、とかく気を遠くへ投げ出せる事柄であればなんだってよいのです。

ただ、気を狂わないように生活を投げ出しても反動は必ずやってきます。

それは土曜朝の倦怠であり、日曜夜の憂鬱です。 そんな重みを有した時間帯は、深い青に満たされています。 底の見えない、油絵具様なもったりとした青色に。

今回は青色の憂愁を奏でる「小雨ちゃん」を紹介させていただきます!

倦怠とともに漂う憂愁「小雨ちゃん」

「小雨ちゃん」の楽曲には、大人の空気が存分に含まれています。

フィルム写真が似合うネオンに溢れた歓楽街や場末の喫茶店ではなく、朝方の薄暗い部屋のガラス花瓶が纏う憂愁を感じます。

青っぽくて、湿っていて、白百合の香りが微かに漂う一室の情景です。

劇性が限りなく削がれた静かな情景。

それは刺激に欠けた無感動な空間だと思えてしまうでしょう。

ですが、人為的なドラマが削除された場には、生活があります。 生活は最も身近でありながら、その空間から見て他者であったときには観測不可能な事柄です。唯一その空間を所有している人だけが、その場における完全な生活を許されるのですから。それゆえガラス花瓶が置かれた部屋は、新規の発見に満ちた美しき情景となりうるのです。

「小雨ちゃん」の音楽は、そんな静かな美をもたらしてくれます。 仕事と社交で疲れ切った体を横たえたくなるような、そのまま目覚めないことを祈ってしまうような美しさを感じます。それこそ、「タルコフスキー」の「ノスタルジア」の持つ青くて、湿っていて、疲れていて、憂鬱な美しさを与えてくれるのです。

https://youtu.be/F-XFpH-YhBs?si=ClO9SSNi1mKaUgUf

静的な感動をもたらしてくれる「小雨ちゃん」の楽曲から、2曲紹介させていただきます。

おすすめ曲

インセンス

メランコリックな青いメロディが特徴的な楽曲です。

曲全体として浮遊感があり、夢の気分を味わえる曲です。 ただその夢は、いつまでも浸っていたい夢ではありません。 悪夢とまではいきませんが、出来ることならば抜け出してしまいたい不気味な夢です。

小さい頃に経験した嫌な思い出(運動が苦手な人であれば体育、絵を描くことや物を作ることが苦手な人であれば図画工作、勉強が苦手な人であれば授業それ自体)と、自意識が姿を現した大人になってから経験した嫌悪(失恋や職場での不和等)とが、疲労と倦怠によって姿かたちを変えて生まれた夢です。

それは可愛らしい絵柄のメルヒェンなのに残酷で憂鬱。 笑い話にもならなければ、感動話にもならない脈略不明な話。 さながら、青一色で描かれた絵本のよう。

ただ、それは静かでとても美しいのです。

https://youtu.be/ScKc4SBzKgg?si=73BOVE8MfSZjBQSU

さるすべり

自らの罪を語るような静かな冒頭、サビではそこへ怒りをぶつけるように歪んだギターが唸りを上げる。

それは嘘の告解による静と、その罪に対する自罰の動です。

大人になるためには、いくつもの嘘が必要となります。 嘘を用いて場を取り繕い、嘘を用いて関係を築き、嘘を用いて縁を切り離し、それの繰り返しこそが大人の生活なのですから。

しかして嘘を吐くたびに心は傷つきます。

自らの口から関係を台無しにしてしまったことに苛まれ、そしてもう二度と同じ関係には戻れないことに苦しみます。 その関係が表面的に変わらなかったとしてもです。 ただ、立ち止まって許しを請う訳にもいきません。 時間は限られ、関われる人の数も限られていますから。

だからこそ、嘘を吐き、関係を自らの手で歪めてしまった時は自らの意志で自らを罰するのです。例えその怒りが永久に自分の中で循環するとしても、自らの「純粋」を取り繕うためにはそうするほかないのですから。

「さるすべり」の静けさはそうした告白であり、動である歪んだギターは憤りなのです。

https://youtu.be/x34lLRmhXLQ?si=rR9lv73OJ4ybr2d1

道先案内

「小雨ちゃん」の音楽は、名前と歌声の可愛らしさに反する痛々しい現実を含んでいます。非現実的な浮遊感がありながらも、忙しなく人の心を傷つけて行く現実の痛みに根差した音楽です。

そして、そこに込められた静かな痛みは深々とした青に染まっていて美しいです。

また各楽曲のメロディが純粋に良くて、何気なく聴いていても非常に心地が良いです。 特に“The Smashing Pumpkins”や”ART-SCHOOL”が好きな人であれば、絶対に好きになれます。

本当に素敵な楽曲ばかりなので、ぜひ聴いてみてください!

https://www.youtube.com/channel/UCTP07oPT6LBf9JwysWDImFg

https://open.spotify.com/intl-ja/artist/1ajWMDMk0KjajcZF34vqmD?si=sGCmhMuNTcuAXgzvzQTeoQ

https://on.soundcloud.com/0XriL5FGNzazN6eLhU

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