前書き
夏本番に向けて自然は台風をもたらしましたね。
肌触りの悪い湿り気と鬱陶しい気温とがその跡として残っています。
ただ、もう幾日か経てばそれらを忘れさせてくれるカラッとした夏晴れがやってきて、今度は涼しさを求めて秋を望むようになるのでしょう。
季節を希求する、あるいは何かを希求する。
そんなときの前提条件は、いま何かが足りていないという現実感覚です。
梅雨の場合であれば「最近、服が全然乾かなくて、早くカラッとした晴れが欲しいな」など、生活に根付いた感覚です。
何かを求めるときにはそんな感覚が必要となります。
こうした感覚ですが、時として絶対に不可能なものを願う場合もあります。 「どっかからお金が降ってこないかな」とか「なんもしなくても家事が終わらないかな」とか、そんな空理空論です。
もちろん、これらの願いに現実の触感はあります。 ですが、願いが叶うというのは、基本的に対価が必要とされます。それは対象が季節であれば時間と不快感であり、何かの地位や能力であれば労力です。
そして、その対象がいつかどこかで手に入ると思い描いていた淡く青い景色であれば、費やさなければならないのは青春というかけがえのない経験です。
今回は、手に入ると思い描いていた淡く青い景色と、その代償である青春を表現する「hardnuts」を紹介させていただきます!
https://youtu.be/iHG-gpOpQPw?si=sghhbLKGDChXDtec
手に入ると思っていた青い季節「hardnuts」
「hardnuts」は、ポストハードコア・ミッドウェストエモに分類されるバンドです。
瑞々しく抒情的なギタ―アルペジオと透き通るような歌声が、リズミカルなリズム隊と快く絡み合って、空想上の青い季節を描き出します。 そして、そうせざるを得ないと思えてしまうシャウトは非情な美しさを有し、清らかな青い情景に退廃的かつ抒情的な色彩を付け足しています。
その色彩によって描き出される光景は清らかで美しくありながら、退廃性さえ纏っているあまりにも理想的な青い光景です。
青く遠い空、青く深い海、青く乾いた空気。 安らかな恋とその破綻。 あるいは、青春と友情の静かな破綻と再興。
そんな誰もが欲していながらも、誰もが手にすることのできなかったあまりにも青臭くて、誰もそれを願いながらも口にすることのできなかった空想を「hardnuts」の音楽は描き出してくれています。
おすすめ曲
grau
物悲しさと爽やかさを兼ね備えたドラマチック(色彩は限りなく透き通った青と白)なアルペジオから始まり、激情的な音楽展開を繰り広げていく楽曲です。
この楽曲は「hardnuts」の音楽性の中核を成す、爽やかかつ切ない痛々しさを含むアルペジオを存分に楽しめる楽曲です。
イントロのアルペジオからバンドサウンドが立ち上がる瞬間において、楽曲が作り出す透明な世界が多層的な響きによって一瞬で作り出されます。 その感傷的な爽やかさは、透き通った深々とした青さと乾いた夏の空気を含んでいます。
そしてボーカルの透き通るような声音が、透明かつ身体性を有した音の連なりの中に加わることによって、「grau」の世界観は儚さを纏います。
それは実態を持たない夏。 始まりもしなければ、終わりもしない大切な誰かとの関係。 空想的でありながらも、希求してしまう苦しさ。 ただ青臭い望みだとしても、その風景は限りなく透明で美しい。
https://youtu.be/FDsJpQXHMkU?si=j1MLJDfxRkcYBCGO
13番目の
こちらはグランジ(ざっくりいえばNirvanaの様な音楽ジャンルです)的なイントロから始まり、「hardnuts」の持つ爽やかなミッドエストエモ的なアルペジオが絡み合って混じり合って展開される楽曲です。
そのアルペジオは美しい響きを持ち、透明感のあるボーカルの声と混ざることで爽やかな世界空間を作り上げます。 ただその響きは、思春期の苛立ちや青年期の鬱屈を想起させるような歪みが加わっています。 この歪は、理想から少し遠ざかった人間臭さを表現しているように思えます。このことは重々しいベースやドラムサウンドにも表れています。
「13番目の」は、グランジ的な荒々しいサウンドとミッドウェストエモ的な爽やかなサウンドが絡み合い、鋭さを帯びた爽やかなだけではなく青い季節を描き出しています。 そこには身体性を持った悲痛さが滲みつつも、それさえも希求されるべき人間賛歌として歌い上げるカラッとした爽やかさが現れています。
あまりにも晴れた冬の日の朝。 いつも隣にいた誰かはいない。 そのことに絶望する誰か。 あまりにも強い痛みは大切な存在を拒絶する。 自意識に閉じ込められた誰かは、ふと青すぎる空を見つめる。
「13番目の」は乾いた青い季節に内包される切ない終わりを想起させてくれます。
https://youtu.be/XwwHi2NuxVE?si=UdkfJtlWvTxcOinG
道先案内
「hardnuts」の楽曲は、いずれも爽やかさと透明性に富んでおり、手を伸ばしても届くことのない理想世界を脳裏に思い描けてしまいます。
そして、それは光景として広がるだけではなく、その空想の中で繰り広げられる身体性を伴った感情も結晶の様に広がって行きます。
そのために「hardnuts」の楽曲にはドラマ性に基づいた感情的奥行きが生じ、決して軽くない音楽だという印象をもたらします。
爽やかで、透明感が溢れていて、非現実的でありながらも現実的な身体性を持った感情をぜひ「hardnuts」で味わってみてください!
https://www.youtube.com/channel/UCZ-OiKXGp6IzcdAUuE0zcog
https://youtu.be/fY1_fJ1cvIQ?si=gLCBFAzvOgJSDUYC