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刻印された記憶をもたらす「ねむたいホネ」

刻印された記憶をもたらす「ねむたいホネ」

2026.10.18

消えるもの

生きている間、人は無数の情報を摂取し続けます。

幼い頃には家族やEテレから情報を受け取り、少し成長して学校に通うようになれば数学や国語などを学び、それから娯楽としてアニメや音楽の情報にも触れるようになります。そして、社会人になれば、会社や市場で飛び交う複雑怪奇で賞味期限の早い情報を大量に嚥下しなければなりません。

そうした情報を大量に摂取していると、怒涛のように押し寄せる音や感触、光景で頭は溢れかえります。横溢する情報は、大切な情報(家族や友達、恋人との思い出など)を薄め、最終的にはその輪郭だけを残して消し去ってしまいます。

虚しい情報の波によって半ば消失してしまった大切な情報ですが、その輪郭だけは、経験として身体に刻み込まれています。

かつて使っていた神経には、さまざまな運動の情報が刻印されています。

そして、神経の刻印に触れるようななにかと出会うたび、大切な情報の光景や香りなどは微かに蘇ります。

神経の刻印に、そっと触れるもの。

それは玩具でも、本でも、文房具でも、水でも、オレンジジュースでも、紅茶に浸したマドレーヌでもよいです。

そして、大切な情報と直接関連付けられた物質でなくとも、その美しい記憶を間接的に触発するなにかでもよいはずです。

今回は、そんな記憶を呼び起こす素敵な音楽を奏でる「ねむたいホネ」を紹介させていただきます!

https://youtu.be/8KPdTYLDMDw?si=g185nzxftvNVFPu4

刻印された記憶をもたらす「ねむたいホネ」

「ねむたいホネ」は、柔らかな音と過度な装飾を削ぎ落としたシンプルな音で、懐かしくて優しい音楽を奏でる日本のロックバンドです。

フォーク・ポップやインディー・ポップ、オルタナティブロック、エレクトロなど多様なジャンルを横断した音楽を「ねむたいホネ」は奏でています。

ポップの持つ柔らかな音と、オルタナティブロックの持つざらついた音。

そんな相反する音が日本語の美しい詩と歌謡的なメロディの中で混ざり、複雑な感情と情景を克明に描いています。描かれる美しい光景には、大切な記憶の中に刻み込まれた喜びや悲しみが内包されており、それをもたらした香りや感触を呼び起こしてくれます。

こうして呼び起こされる像には、「ねむたいホネ」の楽曲が持つ自然な感覚が含まれています。それは、シンプルな音で美しいメロディを奏でる洗練された素朴さです。

「ねむたいホネ」が奏でる音楽は、そんな素敵な素朴さに彩られており、その温かくも柔らかな音の色彩は、封じ込められた記憶を呼び起こしてくれます。

https://youtu.be/NHJysSvShiI?si=hmLP2R3MgOHOQdpM

やさしい魔法

温かく柔らかな光を味わえる楽曲です。

濁りないクリーンなギターと柔らかな電子音が奏でるメロディに、ベースの温かな低音と無駄を削ぎ落としたドラムが加わり、イントロが展開されます。静かに奏でられる柔らかなメロディは、晴れ渡った秋空の午後三時頃の柔らかな陽光のように温かく、神経に優しく浸透します。自然の光に限りなく近しい音は、汚れを知らなかった輝かしい過去を脳裏に像として結びます。鮮やかな色、手触りの良い温度、鼻腔をくすぐる清らかな汗の香り、あらゆる感覚が像の中に呼び起こされます。

この柔らかなイントロによって呼び起こされた像は、クリーンなギターのリフを中心として展開されるAメロとともに、その輝きを増していきます。Aメロでは、余分な音を極限まで削ぎ落としたリズム隊と鍵盤が奏でる丸いメロディが、ギターリフを支えます。その繊細な音の折り重なりは、美しい過去の像にガラス窓を介して部屋に入り込む優しい陽光を浴びせ、静謐な美しさを磨き上げます。

磨き上げられた美しさは、サビの中で宙に浮かびます。

サビでは、自然光を彷彿とさせる柔らかな高音を鳴らす鍵盤が中心的にメロディを奏で、ギターとリズム隊はそのメロディと歌声を静かに支えます。この展開により、イントロからAメロ、サビへと自然につながる音の流れは高揚し、美しい柔らかな像は神経から遊離し、感覚の中でシャボン玉が弾けるように明滅します。あまりにも美化された記憶は、音の昂ぶりに従って現実的感覚から完全に遊離し、その極限の乖離のために弾け飛び、虹色の薄膜としてひらひらと現実へと落ちていきます。

そうして、余計な音が削られたクリーンなギターと、温かな鍵盤の電子音を中心とした楽曲は、再び記憶の美化と明滅を描きながら展開し、鈴のような高音とともに終局を迎えます。

「やさしい魔法」は、美しき世界を描き、その明滅を表現した素敵な楽曲です。

https://youtu.be/VhJ8rD1yx7g?si=POZPFjRG5hbCEDF_

ふぶき

冷たい海中を想起させる透明な電子音から始まる楽曲です。

静かな波を白く染める小さな泡の粒が、ぷくぷくとゆっくりと浮かび上がっては消える、そんな冷たさと柔らかさを同時に覚えてしまうような電子音の深い響き。ここにクリーンなギターのアルペジオが加わることによって、冷たい海の静けさがより引き立てられます。そして、イントロの展開に従って電子音が消え、楽曲はギターと女性ボーカルによって静かに広がっていきます。そして、装飾する音を削ぎ落としたイントロには、そのシンプルさに奉仕する温かなベースが混じります。冬の海のようにゆったりと、けれども確かに波打ちながら楽曲は進行し、Aメロへと連続的に繋がります。

シンプルなリズム隊、冷たい海の柔らかな波をなぞるようなきらきらとしたギター、水面の下で生まれては静かに消えるような電子音によってAメロは展開されます。その触れれば壊れてしまう氷の結晶のような美しさは、電子音と入れ替わるように織り込まれる女性ボーカルの歌声とアルペジオによって、より繊細な響きを持つようになります。

そうした繊細な美しさは、Aメロの終わりと同時に始まるギターソロによって煌めき始めます。歪んだギターによって奏でられるソロパートは、それまでの優しく楽曲を支えていたリズム隊とともに、結晶に入り込んで反射する鋭い光を表現し、これによって静謐な世界には抒情的な光が溢れます。それは、狭い世界の息苦しさに追い詰められながらも、決して絶望することなく、優しき心で前を見続ける人の視界を照らす希望の光です。

希望の光は残響としてゆっくりと曲の中に溶け込み、楽曲をアウトロへと導きます。歪んだギターの残響によって接続されるアウトロは、ギターとボーカルを中心に展開され、電子音やベース、ドラムと静かに混じり合っては、再び静かに離れていきます。そうして寒空の下で吹かれる口笛を彷彿とさせる音と、深いリバーブのかかったギターの柔らかな響きとともに終わりを迎えます。

「ふぶき」は、冷たくも美しい世界とその中に挿し込む希望の光を描いた素敵な楽曲です。

https://youtu.be/avA841iPHKs?si=Xp2HRmN7sXvwawU8

道先案内

「ねむたいホネ」は、柔らかく温かなメロディを洗練された素朴さで奏でる素敵なバンドです。

楽曲はいずれも優しい光に満たされており、人生で経験してきた美しい感触や情動を克明に表現しています。

そこに虚飾はなく、真正面からただ美しい音楽を奏でるという誠実さがあります。

本当に素敵な楽曲ばかりなので、ぜひ「ねむたいホネ」を聴いてみてください!

https://www.youtube.com/@iiwasuresan/videos

https://open.spotify.com/artist/6CLOdh2fxMsqvUSrofbP3A?si=T-ycRIY9RFWvnVzpH_WQ3Q

https://music.apple.com/jp/artist/%E3%81%AD%E3%82%80%E3%81%9F%E3%81%84%E3%83%9B%E3%83%8D/6786153933

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